被害者の声が増えない理由

国も西武信用金庫も認めた収益用不動産に対する不適切な行為。しかし、業務改善命令から1年以上経過した2020年10月現在においても、国からも西武信用金庫からも
被害者救済
という話しは一切出てきていません。
ちなみに、先のスルガ銀行に対する業務停止命令において金融庁は明確に被害者救済を指示しています。
スルガ銀行株式会社に対する行政処分について
⑥ シェアハウス向け融資及びその他投資用不動産融資に関して、金利引き下げ、返済条件見直し、金融ADR等を活用した元本の一部カットなど、個々の債務者に対して適切な対応を行うための態勢の確立
https://www.fsa.go.jp/news/30/ginkou/20181005/20181005.html
このように、被害者に対して明確に差をつけていることが全く理解できないため、金融庁に何度も問合せを行っていますが、今のところ具体的な回答は一切届いていません。
業務改善命令を再確認
過去に何度も書いていますが、不適切な行為・疑惑に関してはこちらにその全容を記載しています。
また、関東財務局にはしっかりと発表資料が残っています。
西武信用金庫に対する行政処分について
(一部抜粋)
第2.処分の理由
当局による立入検査の結果や信用金庫法第89条第1項において準用する銀行法第24条第1項に基づき求めた報告を検証(注)したところ、金庫は業績優先の営業を推進するあまり、内部管理態勢の整備を怠った結果、以下のような問題が認められた。
(1)投資用不動産向けの融資にあたり、形式的な審査にとどまり、不適切な信用リスク管理態勢となっている。
ⅰ融資実行を優先するあまり、融資審査にあたり、投資目的の賃貸用不動産向け融資案件を持ち込む業者による融資関係資料の偽装・改ざんを金庫職員が看過している事例が多数認められる。
ⅱ投資目的の賃貸用不動産向け融資について、融資期間に法定耐用年数を超える経済的耐用年数を適用する場合には適切な見積りが不可欠である中、経済的耐用年数等を証する書面を作成する外部専門家に対し、金庫職員が耐用年数や修繕費用等を指示・示唆するなどの不適切な行為が多数認められる。
http://kantou.mof.go.jp/rizai/pagekthp027000005.html
業務改善命令の説明
投資目的の賃貸用不動産向け融資
実需向けの住宅ローンではなく「投資目的の賃貸用不動産向け」と明言されています。
融資期間に法定耐用年数を超える経済的耐用年数を適用する意味
物件を購入する買主(大家)にとって、融資期間(返済期間)は非常に大きなパラメータです。例えばRC造の法定耐用年数は47年です。金融機関によってはこの時点から掛け目を入れ上限を下げているところもありますが、計算上、今回は47年をフル活用することとします。
仮に築30年のRC造のマンションの購入資金として1億円を借りる場合で考えてみます。この場合、47年-30年=17年が返済期間となります。さらに、イメージをしやすくするためにあえて金利は無視して計算します。
1億円を17年で金利を無視して返済する場合、年間返済額は約588万円となります。対して、経済的耐用年数としてRC造の全耐用年数を70年と設定した場合、70年-30年=40年が返済期間にできてしまうということになります。
返済期間が倍以上になれば、年間返済額は当然半額以下、この場合は250万円となります。このように、返済期間が長くなればなるほど年間返済額が減ることとなり、見た目上でのキャッシュフローが大きく増えることになるのです。
だったら、どの物件でも法定耐用年数ではなく経済的耐用年数を用いればいいじゃない
そんな意見が出てくるのも当然です。
経済的耐用年数を適用する場合には適切な見積りが不可欠
金融庁はそこに釘を刺しています。簡単に言うと、法定耐用年数では構造によって決まった数字があるので不正な操作をする余地がほとんどない、逆に経済的耐用年数の場合は何とでもできてしまうので経済的耐用年数を用いる場合には
不動産の専門家による経済的耐用年数等を証する書面(エビデンス)を準備すること
と各金融機関に以前から指導していました。
金庫職員が耐用年数や修繕費用等を指示・示唆するなどの不適切な行為が多数認められる
にも関わらず、今回はあろうことか、逆に金庫職員自らが改ざんの指示・示唆したものが多数見つかってしまいました。金融庁からは「多数」と表現されているこの行為、2019年5月24日に西武信用金庫が発表した資料によれば
- 258物件で不正の証拠が見つかっている
- 258物件はこのスキームでの取引の約1割である(=約2500物件で不正の可能性があると想定される)
このように、最低でも258物件、最大では約2500物件において、この不正スキームによる過剰融資が実行された可能性があるのです。
最大の問題
全耐用年数をいたずらに延ばすことにより、本来であればほとんどない~極端に短い「残耐用年数」が大幅に延びます。その結果
- 極端に長い返済期間
- 残耐用年数が長いことから収益還元法による評価額が高く見える
こんな状態で融資を受けた物件となります。しかし、実際にはその実力がない物件であることは明らかであり不正な評価による過剰な融資を受けた債務超過の物件を保有していることとなります。
この状態の物件の一番の問題は
出口が塞がれている
出口とは「売却」を意味しています。数年後に売却しようにも、債務以上の価格では売れない可能性が非常に高くなります。特に返済期間が取れないこと、これが大きな障害となります。
それでも事件になりづらい理由
いわゆるスルガ銀行xかぼちゃの馬車事件、またアルヒxアプラス事件においては、サブリース会社からの支払いが滞ったことから不適切な行為が発覚、その被害者が声を上げて発覚しました。しかし、今回の西武信用金庫の不適切な行為においては、このようなサブリース会社が間に入っていません。
物件を売買する仲介業者の存在はあっても
サブリースでxx年家賃収入が保証されているので安心
的な謳い文句がなく、単純に融資を受けて、買って、運用する。普通の収益不動産の売買にしか見えない構造になっており、そこには自己責任論が出てくることも当然のことかと思います。
その自己責任論に関しては、別の記事で書いています。
返済期間が長いことから月々(=年間)の返済額が小さい、そのため現時点ではデフォルトしづらい構造であり、この問題に気がつくのは売却時、そのタイミングはまだ先であることが多いため、なかなか事件化しづらい状況になっていると思われます。
さらに言えば、一部の債務者は
不正を知ってて買っている
この不正・不適切な行為を逆に利用した債務者から見れば
- 融資期間が延ばせてキャッシュフローがあるだけでOK
- わかっていて融資を受けているのだからそっとしておいてくれ
そう思っている人も相当数いるのでしょう。そちらはそちらでジッとしていればいいだけです。ただ、売却時になって「俺も騙されてたぁ~」と言うのだけはなしです。
要するに
- そもそもこの問題に気づいていない
- 既に諦めている
- 不正を知ってて買っている
こんな背景から現時点ではなかなか問題が表沙汰になりづらい環境であると思われます。









