【自己責任】不正融資における資料改ざんに思うこと

私自身も不正融資の被害者だと自負しており、2年以上も時間をかけて金融機関や業者(私の場合は不動産鑑定士)と戦っていますので
不正は許さない!
という立場に立っています。
私の受けた被害の原因は
- 金融機関主導で行われていた不正であることが業務改善命令によって明らかとなっている
- 不正に関与した国家資格保有者は明確な法律違反である
- 私は不正に一切関与していない
- しかしながら不正な資料を事前に私がチェックしていなかったという過失があるため一定の自己責任もある
同志とも思える同様な被害に遭われた方には1日も早く被害の回復をして欲しいと願っています。
そんな中、不動産売買において不正融資被害の記事を日々見かけていますが、ほとんどの全てにおいて
買主側の重大な過失
をあえてスルーしていると感じています。
数千万円~億円という借金をし、何10年もの期間で返済してでも「収益用不動産を購入する」という判断を下したその自己責任からは絶対に逃げられませんし、仮に自己責任どころか「不正に加担していた」となると話しは全く異なってきます。
販売価格設定
「改ざん」ネタに入る前に私が以前に書いた「不動産の売買価格と評価額」に関してちょっとだけ。
評価額は誰が計算してもほぼ同じ数字になります。対して売買価格の設定は売主の自由であり「評価額の何割増しまでの範囲でしか売価設定ができない」などの規制は一切ありませんので、売主の思いひとつでいくらにでも設定可能です。売主と買主で合意すればいくらで売買されても何ら問題ない、これは不動産に限らず自由経済圏でのビジネスとしてごく当たり前の光景です。
例えばビールを例にしてみましょう。350mlの缶ビール、1本いくらで買いますか?
スーパー、ディスカウントストア、コンビニ、それぞれで値段は異なるのが普通です。さらにはイベント会場や旅館・ホテルなどでは相当高く売られていますがこれらの値段設定に違法性は一切ありません。高い・安いによって買う・買わないは買主の価値観で判断すればいいだけのことです。
先のブログでも書いているように、そもそも評価額と売買価格が近似値であることなどほとんどありません。評価額に対して販売価格の乖離が大きいことを不安視するなら買わなければいいだけのことです。それを買ったあとになって収支が回らないからと言って「高値掴みだっ!」、その理屈が通るとは到底思えません。
改ざんされたと思われる資料
ここからが本題です。(自称)不正融資の被害者の声でよく見かける「改ざん資料」にはいくつかの種類があります。
レントロール
レントロールとは簡単に言えば家賃設定と入居状況のことです。家賃(+管理費)x入居率は収入そのものですのでこれを改ざんされると購入後に身動きが取れなくなります。
ただ、これとて事前にいくらでも調査できます。まず、近隣の家賃相場などネットで5分とかからず把握できます。物件の構造、築年数、駅から距離、近隣環境などから相場がいくらぐらいなのか?などは簡単に掴めます。
仮に地方都市の学生街の物件としましょう。駅から徒歩10分以内の20m2のワンルームで家賃+管理費で4万円ぐらいが平均と把握できたとします。それに対して検討している物件の競争力を確認するまでのことは買主として当然の作業です。
- 構造(木造、鉄骨造、RC造)と築年数
- バス・トイレセパレート or 3点ユニット
- コンロはIH or ガス
- 室内洗濯機置場の有無
- ベランダの有無、広さ
- モニタ付きインターフォンや宅配ボックスの有無
- エレベータの有無
- インターネット対応
- 駐輪場の有無
- 楽器やペットの可否
- 管理状態
- 近隣環境
これらの条件によって家賃は大きく変動します。さらに学生街となると競合過多であることも普通です。これらの調査結果から家賃設定は適正か?を判断します。
利回り(=販売価格)
月々の家賃収入x12ヶ月=年間家賃収入となります。その数字が販売価格に対して何%か?それが利回りです。2000年ごろの地方都市なら15%なんて物件もざらにありましたが、2020年を超えた現在、地方でも10%未満、都市部では7%未満でも普通になってきてしまっています。
この計算式は家賃収入がダイレクトに効いてきますので上記のレントロール次第です。仮に4万円の部屋が10部屋の1棟物件とすれば4万円x10部屋x12ヶ月=480万円が満室想定家賃収入となります。
この家賃収入に対して販売価格が4800万円であれば利回りは10%となります。これがレントロールを改ざんされ4万円→6万円としただけで7200万円でも利回り10%になるのです。
ここで事前に調査すべきことは
- 家賃設定は正しいのか?
- エリア的に利回り10%が普通なのか?
もちろん相場4万円のエリアで6万円でも競争力のある物件は存在します。駅徒歩1分、管理人常駐、間取りがいい、ペット可、楽器可、浴室乾燥機、24時間換気、、、色々な条件によって家賃は変動します。
利回りに関しては、エリアとして人気のある・なしによって大きく変わってくるため、そのあたりの見極めが必要となります。
入居率、修繕費用
「満室と聞いていたが実際には半分が空室だった」
こんな話、契約書をチェックすればすぐにわかることですが、実際にはそこまでやっていなかったのでしょう。
また、大規模修繕や原状回復の履歴は当然にチェックすべきです。それはなぜか?その理由は購入後の運用資金計画のためです。
不動産は買って終わりではありません。入退去は当然にありますし経時変化で日々劣化していきます。原状回復費とて1部屋あたり家賃の10倍以上かかることもザラ。大規模修繕においては数100万円単位の資金が必要となります。さらにエレベータや消火設備の法定点検なども馬鹿になりません。
頭金なしの融資契約
そもそも、長年経営している不動産の専門業者や資産家等の特段の理由がない限り、不動産経営において何の実績もない一般人を相手に金融機関が頭金なしで巨額の融資するなどあり得ないのです。なのにそれが普通に行われる背景はほぼほぼ
不正な二重契約
をしているからです。
仮に本来は5000万円で買う物件であれば頭金は500万円~1000万円用意するのが普通です。それを不要する=その分も含めて融資を受ける(フルローンやオーバーローン)、ということを意味します。そのためにやることが「二重契約」です。
5000万円の物件に対して5000万円の融資を受けるために、業者が金融機関に対して「販売価格の高い偽の契約書」を提出するのです。例えば販売価格を6000万円、頭金1000万円とする契約書と1000万円の領収書を偽造、それを金融機関に提出して審査を受ける、という流れが王道でしょう。
もちろんこれは明らかに不正、不法行為です。この偽の契約書にも買主の記名押印が必要ですが、それをやったのは誰なのでしょう?押印は実印ですので普通に考えれば買主が関与したはずです。
資産や源泉徴収票の偽造
これらの資料に関しては、買主が不正を直接やった可能性は低く多くの場合は業者が行ったものと思われます。やり方としてはフォトショで加工するのが一般的ですが、都市伝説的には「廃棄になったATMマシンを購入し実際に通帳にプリントした」なんて話しもありました。
これらの偽造を買主が全く知らなかったとなれば、この部分に関しては情状酌量の余地があると考えますが、果たして本当に何も知らなかったのかは?です。
避けられない自己責任
多くの被害者に共通して言えることは
自ら現地に赴き自分の目で物件や周辺環境を確認という基本的なことをやっていない
とにかく最初にやるべきことは現地調査です。現地を見れば何となくでも物件の現状を把握できます。
さらに、家賃滞納やその他トラブルがないか?大規模修繕履歴等を確認、これらは投資をする上で事前に調査して当然の行為です。
これらをやらなかった(業者の説明を鵜呑みにした)、やったけどおかしいと思わなかった、さらには「嘘だとわかっていた」、これらは買主の重大な過失です。
上記で取り上げた項目の不正のひとつだけが単独で行われた、ということはあり得ないと考えます。その理由は、ひとつの偽造だけでは審査を通らない可能性が高いからです。上記で取り上げてきた内容の不正の(ほぼ)全てを行わない限り、金融機関の審査は通らなかったでしょう。
このようなことから、被害者の多くは「自ら不正に関与していた可能性が高い」と私は受け止めています。また、100歩譲って被害者が何ら不正に関与していなかったとしても
購入前にやるべきことをほとんど(全く?)やっていない
ほとんどの被害者にとって人生最大規模の金額の融資契約をしたと思われますが、それにしてはそこに至るまでがあまりにも杜撰すぎではないでしょうか?そもそもやるべきことをやっていたら
買わない=不正融資を受けない
という選択も十分あったはずです。そして実際、マジョリティは「買わない」と判断、そして多くの人が見送ったハズレ物件に手を出した人が被害者となっているのです。
「私は詐欺的な不正行為の被害者であり自己責任は一切ない」という主張を頻繁に見かけますが、やるべきことをやっていない限り、残念ながらその主張は司法では全く通じませんし、世間でも相手にされないでしょう。
戦う相手は金融機関なのか?
そもそも、これらの不正の加害者は一義的には「業者」であり「金融機関」ではありません。にも関わらず、不正を追求し賠償を求める相手が金融機関であること、ここに大きな疑問を感じています。
実際、私自身がこのような不正融資を事件化して金融機関を相手取って民事・刑事で訴えるべく幾度となくトライしましたが、弁護士、警察ともに全く相手にしてもらえませんでした。その理由は
- 売買契約の仲介をしたのは業者であり金融機関は(表向き)無関係である
- 金融機関と被害者の合意の契約行為により融資を受けて所有権を移転したのだから両者の間に詐欺行為は成立しない
- 金融機関はもちろんのこと、業者を相手にしたとしても詐欺としての要件と証拠を揃えて立証する責任は被害者
いわゆる「かぼちゃの馬車」事件においては、あえて業者の責任を不問とする代わりに重要な証言を引き出し、結果としてスルガ銀行から大幅な譲歩を引き出したと報道されています。
しかし、この結果は「未成熟なマーケットであったシャアハウス向け融資」に限定した定型的な不正に対する超イレギュラーな徳政令であり、アパマン問題でも同じ手法が通じる保証は一切ありません(私個人としては「通じない」とすら思っています)。
上記で説明している改ざんの首謀者は業者であり、金融機関はその売買契約に基づき審査し、契約を実行しただけです。金融機関から見れば逆に「自分たちこそ業者と買主の共謀により騙された被害者」というスタンスを取るでしょう。実際にはその業者と金融機関が共謀していたのでしょうが、買主がその共謀や不正の立証をできない限り、金融機関を相手にした戦いは明らかに不利です。
このようなことから、本来買主が戦う相手はまず業者であるべきです。その戦いの過程で金融機関が不正に関与した証拠が出てきてはじめて金融機関とも戦える、という流れだと思います。
ただし、その証拠が出てきたとしてすらも「その不正と損害の因果関係」これを立証する責任は被害者です。不正があったことと損害はイコールではないは司法での常識であり、そのことは弁護士なら誰でもが知っていることです。
うがった見方をすれば
裁判では戦えない。だから被害者の過失は一切隠したまま、業者の不正は不問にしたまま金融機関を悪者に仕立て、SNSやデモで世間にアピールしつつ調停で何らかの譲歩を得ようとしている
としか見えないのです。
SNS等で自分の意見を発信することには何の制限も問題もありませんが、残念ながらそこから明るい未来には全く繋がっていないと考えます。
何もしなければ100vs0で負けます。かと言って何かをしたところで0vs100で勝つこともあり得ません。勝負はどれだけ「50vs50に近づけるか?」でしょう。
何よりもまずアクションしないことには100vs0で負ける結果にしか時間は進みませんのでアクションすることは重要ですが、そこには当然「事実に基づき」「法的根拠の下で」正しい振る舞いが必要だと思います。
不正に対して「過失」という事実を隠蔽して戦っても勝ち目はない思います。早く現実を直視して次のステップに進んだほうが苦しんでいる被害者のためになる、と日々強く感じています。








